色や質感の重なりから、見えない命のエネルギーを描き出すアーティスト・ayaka nakamura。日常の風景や自然の気配からインスピレーションを得て、「命の存在」をテーマに創作を続けています。アクリルやメッキ調顔料など多様な素材を用い、偶然性と構成性を共存させた表現によって、鑑賞者の心にそっと寄り添うような作品を生み出してきました。今回のインタビューでは、創作の背景や、今後の展望についてお話を伺いました。
ayaka nakamura
1988年、東京都生まれ
2013年、武蔵野美術大学油絵学科版画専攻卒業
国内外で活動し、近年ではアメリカ・デンマーク・中国にて滞在制作を行う。
「命の存在」をテーマに、繊細かつ力強い画面づくりを目指し、絵や映像などを手がける。
TVや雑誌に数多く掲載され、高級マンションのラウンジなどにも作品が展示されている。
主な個展にBunkamura Box Gallery(東京)、MU GALLERY (東京)、
参加したグループ展はEPICENTRO ART(ベルリン)、White Box(NY)、WAH Center(NY)、Anthology Film Archives(NY)、ART FORMOSA(台北)、OLA Galleri & Ateljé(スウェーデン)などがある。
大型新人発掘アートコンテスト「ARTIST NEW GATE」第1回 グランプリ受賞 (2020)
第1回NY公募展アートインキュベーション, 最優秀賞受賞 (2023)
「命の存在」をテーマにされていますが、具体的にどのような風景や瞬間からインスピレーションを得ていますか?
あたりまえにある日常の中の光や風、自然の中にある一瞬の気配のような存在の余白・風景からインスピレーションを受けることが多いです。
風景って命の集まりだと思っていまして、目に見えているものはもちろん
例えば、今実際に目の前にその人がいなくても生きていると、まわりの空気って動くじゃないですか。
その空気が巡り巡って、今見ている風景に溶け込んでいるのかもしれない、と思ったりするんですよね。
世界に存在する全ての命が少しずつ影響し合って溶けこんで、今見ている景色になっているんじゃないかな、と思っていまして
そういう目に見えないけれどそこにある命の存在やエネルギーを描きたいと思っています。
作品制作において、特にこだわっている素材や技法について教えてください。
現代のデジタル社会において「存在する」ということや、「体験」はとても重要だと思っていまして、光の動きによって変化し、視点を変えることで新たな表情を見せる作品づくりを目指しています。
作品があること - 時間と空間を感じることで、自分自身の「存在」について感じていただけたらな、と思っています。
今回の個展に出展する作品について教えてください。
青い作品がいつもより多い気がします。
初夏の新しい風や輝き、萌え出る生命を意識した、今の季節に合わせた作品なので
ぜひ見ていただけましたら嬉しいです。
制作中に大切にしている時間やルーティンはありますか?
私の制作は一瞬なので、「制作中」という感覚があまりないんですよね…
一瞬というのは時計で見ると4~5時間経っていたりするのですが、大切にしていることは「集中」でしょうか。
集中することがすごく好きで、アートを選んだ理由の一つは「最も精度の高い集中が得られるから」なんですよね。集中がうまくいかない時は、考える余地のない速さ・言葉になる前の脳の伝達速度で手を動かして集中の軌道に持っていってます。
今の制作スタイルに至るまでに、捨てた/手放した考え方や方法はありますか?
全ては蓄積だと思っているので手放したものは無いように思います。
変化としては、初期は「見たままを描く」ことが多かったのですが、徐々に「見えないもの」を描くように変わっていきました。今は、光や風、感情といった抽象的な存在をどう捉えるかに興味があります。
制作中に意識している色彩の組み合わせや、特に好きな色があれば教えてください。
気づくと青系を使っています。
同じような色味でも、透明・不透明、テクスチャーの差など色々あるのですが
それらの組み合わせによって出来る変化を常に探求しています。
もっと色々な色や素材を使ってみたいです。
これまでに鑑賞者から受け取った感想や反応で、特に印象に残っているものはありますか?
「家に絵があると寂しくない」と言ってくださった人がいて、
まさに私が絵を描いている理由だな、と。
アートは作品と見る人の、お互いの関係によって成り立つものだと思っているのですが、絵の存在が、見た人の存在につながるような、それによって絵が存在できるようなものをつくりたいと思っています。
これまでの人生や創作活動の中で、特に影響を受けた人物や作品はありますか?その理由も教えてください。
生き方として-ガストン・アクリオというペルーの有名シェフがいうのですが、
彼は食材の原産地を支援するなど、「つくること」と「社会とのつながり」を両立していて、その在り方が、自分が進学の時に美大か医大か迷った原点とも重なります。将来的にはアートを通してそういうことも行なっていきたいです。
子どもの頃に好きだった絵本やアニメ、遊びの中で、現在の作品につながっていると思うものはありますか?
「黒ねこサンゴロウ」という、ひとり旅を愛する船乗りの黒ねこのを書いた本があるのですが、子供の頃からこの黒ねこになりたくて、その土地の匂いと人を感じながら旅するように生きたいな、と。海外での滞在制作(AIR)はこの影響が強いです。
しかし、戦争とか国の雰囲気とか、どんどん旅がし辛い世の中になっているなぁ・・・と感じます。
そんな中で絵は何になりえるのだろうと考えてしまいます。こんな世の中だからこそ、少しでも作品が希望や、ふとした時の癒しにつながれば良いなと思っています。
今後の制作において挑戦したいことや意識していきたいことを教えてください。
ブランドや企業とのコラボレーション、壁画などパブリックアートもやっていきたいです。もっと多くの人に見てもらいたいので、何かありましたらぜひお気軽にご相談いただけましたら嬉しいです。
5月29日(木)からギャラリーにて個展を開催いたします!
ayaka nakamura「Awakening」
2025年5月29日(木) ~ 6月17日(火)
営業時間:11:00-19:00 休廊:日月祝
※初日の5月29日(木)は17:00オープンとなります。
※オープニングレセプション:5月29日(木)18:00-20:00
※5月30日(金)はセミナー開催のため、18:00閉場となります。
入場無料・予約不要
会場:tagboat 〒103-0006 東京都中央区日本橋富沢町7-1 ザ・パークレックス人形町 1F
tagboatにて、現代アーティスト・ayaka nakamuraによる個展「Awakening」を開催いたします。
『命の存在』をテーマに創作を続けるayaka nakamuraは、目に見えない光や風、気配といったエネルギーを、色や線、質感の重なりを通して可視化してきました。アクリルやメッキ調顔料など多様な素材を用い、偶然性に導かれた形と、綿密な構成とを組み合わせることで、生命が本来持つ繊細さと力強さをキャンバスに映し出します。
本展では、小さなサイズの作品から100号の大作まで、多彩な新作を発表。初夏の風や光を思わせる爽やかな色彩と、生命の息吹を宿した優しくも力強い筆致による作品が並びます。
存在の本質にそっと触れ、心にやわらかく寄り添うような世界をどうぞご高覧ください。